Lesson6-2 ESG問題

ESG問題を考える

企業活動に関連するESG問題には
さまざまなものがあります。

前回のレッスンでも学んだ通り、
企業統治/Governanceは、
どの企業にも共通するもので、重要な課題となります。

また、環境に関する問題は地球規模でもっとも重要な課題とされており
世界経済フォーラム(WEF)が発行しているグローバルリスク報告書では、
ここ数年のリスクの上位となっているのが
「異常気象」や「気候変動への適応策失敗」となっています。

特に気候変動は

  • 自然災害の増加、
  • 海水面の上昇
  • 海洋生態系への影響
  • 水害

など、さまざまな被害に関連しています。

例えばグローバル企業は生産拠点を途上国に置いていますが、
農業従事者や屋外で建設などに関わる労働者は、
気候変動による自然災害の影響を受けやすくなります。

大規模プランテーションなどは温室効果ガスの排出量を増やし、
水害や干ばつなども起こりやすくなります。

地球の温度は上がり続けていて、
このまま放置することはできない危機的状況なのです。

気候変動を抑えるためには、
技術的革新が必要です。

それとともに、カーボンプライシング(炭素税)の導入で
企業が負担する新たなコストも出てきたので、
こうしたコストを抑えるためにも、
積極的に対策する姿勢が必要になります。

ESG問題と産業

企業はどのようなESG問題を抱えているのでしょうか。

業界別に問題を見ていきましょう。

例1.消費財メーカー

まず消費財メーカーを例に取り考えてみましょう。

消費財メーカーとは、
個人や家庭で消費されるものを製造する企業のことです。

例えば食品、衣料、日用品、家電製品の製造などになります。

これらの業界は世界中から部品や材料を調達しているため、
途上国での労働条件などの社会問題や、環境問題に関わっています。

例2.衣料品メーカー

衣料品を扱うグローバル企業の、
途上国における労働者の扱いには注目が集まっていることは、
これまでのレッスンでも学びましたね。

企業はサプライチェーンの全ての過程で環境問題、社会問題について監視し、
責任を持ってサプライヤーを選定する必要があります。

例3.パーム油を使う企業

食品から洗剤などまでさまざまな製品に使われているパーム油は、
森林伐採や温室効果ガス排出の原因となります。

持続可能な生産になるように、
サプライヤーと協力して環境リスクを管理する必要があります。

※パーム油については、Lesson3-1を復習しましょう。


環境や人権に配慮しない経営は、
取引先や消費者の信頼、評価、評判の低下にもつながり、
大きなリスクとなります。

このページの最後に、
過去に起こってしまった大企業の問題について触れておきます。

NIKEの不買運動

スポーツブランドNIKEに対して、
1997年に不買運動が起きました。

NIKEは自社で工場を持たず、
生産は外注先企業に委託する経営スタイルですが、
委託先のインドネシアやベトナムの工場で、
低賃金・長時間労働・児童労働が行われ、
さらに基準値を超える有害ガスの中での労働を強いていることが発覚したのです。

NIKEは当初、生産はサプライヤーに委託しているため、
責任はサプライヤー側にあり、
この問題はNIKEの責任範囲外であると発表しました。

これを受けてNGOがNIKEを批判し、
北米、ヨーロッパを中心に世界的な不買運動に発展してしまったのです。

言うまでもなく、当時のNIKEは社会的な信頼を失い、
売り上げが激減しました。

こうした社会の流れの中で、
消費者や投資家が、
「知らないうちに人権侵害や環境問題へ加担してしまうのを避けたい」
と考えるようになりました。

企業にはサプライチェーンを管理することが求められるようになったのです。

これは大企業にのみ求められているのではありません。

サプライヤー側も、
人権や環境を無視した経営をしていれば、
サプライヤーとして選定してもらえないということです。


ESG問題への対応に、
「やらない」という選択肢はありません。

NIKEの不買運動でもわかるように、
やらないことはリスクなのです。

次のページでは、ESG経営について学習しましょう。