Lesson6-1 ESGとは

Lesson6では、
これまでの講座の中でも度々出てきたキーワード
「ESG」について学習します。

ESGについてはLesson5-1の関連キーワードで軽く触れましたが、
このレッスンで今一度しっかりその生い立ちや定義について
学んでいきましょう。

ESGとSDGsが似たような言葉で混乱するかもしれません。

SDGsは持続可能な社会にするための大きな目標で、
ESGはSDGsの目標を達成するために解決すべきもの、
と考えるとわかりやすいでしょう。

ESGはなぜ提唱されたか

ESGは、

  • Environment(環境)
  • Social(社会)
  • Governance(企業統治)

の頭文字を取った略語であることはすでに学びましたね。

この全く異なる3つの言葉が、
なぜピックアップされ1つにまとめられたのでしょうか。

「ESG」という言葉が最初に使われたのは2006年です。

当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が
「責任投資原則(PRI)」を提唱しました。


PRIは、ESGを考慮した投資をすることで、
経済的に効率の良い持続可能な金融システムをつくり、
長期的な投資に報い、環境や社会にも利益をもたらすことを
目的としたものです。

つまり、自社の利益だけを追い求め、
環境破壊をしたり労働者から搾取したりしている企業よりも、
ESG課題に取り組み、持続可能な経営をしている企業に投資をするように、
投資家たちに求めたということです。

それでは環境・社会・企業統治の課題を
それぞれ考えていきましょう。

環境/Environment

環境の課題は、地球上に住む全ての人に影響を与える問題です。

主に次のような課題があります。

  • 温室効果ガス排出による気候変動
  • 生産工程での大気や水質汚染
  • 海産物など資源の枯渇
  • 森林破壊
  • 生物多様性の危機

企業は、事業活動で環境に与える負荷を無視していると、
社会的な問題となった時に新たな制度ができて、
費用が課されるなどのリスクがあります。

あらかじめ自社が環境に与えている影響を把握し、
環境への負荷を減らす取り組みをしておくなど、
リスク管理をする必要があります。

社会/Social

社会の課題は、主に企業の人権尊重となります。

  • 人権
  • 労働環境
  • サプライチェーンの管理
  • 製品・サービスの安全性
  • 人材の多様性

強制労働や多様性の欠如などは、
日本にいるとあまり肌で感じることはないかもしれません。

しかし、グローバル企業などは、
生産コストを抑えるために途上国に工場を建て、
現地で労働力を調達しています。

現地での労働者の賃金や、労働環境が適切かを把握する必要があります。

サプライチェーンのどの過程でも、
強制労働や児童労働、男女差別などがないように、
サプライヤーをしっかり管理することが求められているのです。

企業統治/Governance

企業統治とは、透明性のある経営の取り組みを行うための
仕組みをつくることです。

企業統治の課題はそうした仕組みを
継続していくことにあります。

  • 取締役会・理事会の多様性、独立性
  • 役員報酬
  • 賄賂、腐敗
  • 税務戦略
  • ディスクロージャー(情報開示)

投資家はESGのうち、
この企業統治をもっとも重要視するという調査結果があるので、
ESG問題の中でも中核となります。

会計の適切性や、腐敗防止の取り組み、内部統制など、
健全なガバナンス体制の構築が重要です。


ESGはそれぞれ異なる3つの課題を合わせたものですが、
それぞれ相互に関係しており、
別々に対策するよりも、一緒に扱う方が良い場合もあります。

次のページでは、それぞれの「課題」を深掘りしていきましょう。