Lesson6-3 ESG経営

経営の中でESG問題に取り組むなら、
まずは社内外でどのようなESG問題があるか把握する必要があります。

このレッスンでは、「社内のESG問題」と「社外のESG問題」、
それぞれどのような問題があるか見ていきましょう。

社内のESG問題

ESG問題というと「気候変動」や「人権」などテーマが壮大ですが、
そうした問題ばかりではありません。

まずは、社内のESG問題に焦点を当ててみましょう。

社内のESG問題は社員からのヒアリングなどのリサーチ結果から、
経営的に特に重要なものを取り上げます。

E、S、G、それぞれどのような課題が見えてきそうですか。

例えば、Environmentでは、

  • 産業廃棄物の削減に取り組めていない
  • 営業車のCO₂排出

Socialでは、

  • 女性が活躍しにくい社風
  • 残業時間が多い

Governanceでは、

  • 経営管理体制が不透明
  • 会計管理体制が不透明

といった問題が例として挙げられます。

社内のESG問題をリサーチする時は、
社員の小さな声にも耳を傾けましょう。

パワーハラスメントや、性別などによる昇進差別、
残業時間の超過など、
問題が大きくならないうちに対策を取ることも重要です。

このように社内のESG問題は、
どちらかというと「守り」の取り組みとなります。

社外のESG問題

社外のESG問題のリサーチは、
関係者へのヒアリングや視察などで情報を集めます。

さまざまなESG問題が見つかると思いますが、
以下のポイントに絞って問題を抽出してみましょう。

  1. そのESG問題が自社の活動に関連があるか。
    自社の経営資源を利用できるか。
  2. そのESG問題に対応することは、
    自社と社会の双方にとって価値のあることか。

特に2番目は重要です。

ESG問題への対応は社会共通の課題ですが、
ボランティアではありません。

事業活動としてESG問題に取り組むのなら、
社会だけでなく自社の経営にとっても価値のあるものでなければなりません。

持続可能な社会を実現していくためにも、
ESG問題は自社の経営プロセスの中で実行すべきなのです。

例えばお菓子メーカーで、
体に優しいおやつ「オーガニック野菜のチップス」
の販売計画があるとします。

社外のESG問題をリサーチしたところ、
形の悪いオーガニック野菜の廃棄問題がありました。

この野菜を安く仕入れて材料にすれば、
安全なオーガニック野菜を手頃な価格で仕入れることができ(自社にとっての価値)
食品の廃棄問題にも貢献することができます(社会とっての価値)

こうした社外のESG問題への対応は、
いわば「攻め」の取り組みと言えるでしょう。

ESG問題を全体的に捉えよう

ESG問題に取り組むことは、
企業存続の上でも重要なことです。

しかし、社外の問題にばかり気を取られ、
社内の問題が疎かになっては意味がありません。

例えば環境保全にいくら取り組んでも、
職場内の労働環境が悪く、また会計や人事などが不透明な経営では、
ESG問題を新たに生み出していることになります。

まずは社内のESG問題に対応し、
法的、社会的制裁を受けるリスクを抑えておきましょう。

長期的視点で取り組む

特に社外のESG問題に取り組む場合は、
問題が大きいだけに成果がすぐに得られないこともあります。

成果がないと、ステークホルダーからの評価も得られないかもしれません。

それでも焦らずに、長期的な視点で取り組みながら、
より良い方法を模索し、継続していく努力が必要です。

ESGの取り組みと評価方法

ESGは比較的新しい考え方ということもあり、
一定の評価基準がありません。

そのため、目標を設定しづらい現状ではあります。

ESGへの取り組みを評価する第三者機関はありますが、
ESGは数値化が難しいことから、評価機関によって評価が異なります。

他社の事例を参照したり、世間の動向を確認しながら、
自社の規模に適した目標を設定し、取り組みをしていきましょう。

ステークホルダーに評価されやすいことから取り組み始めるのも、
戦略の1つです。

企業のESG取り組み例

キヤノン

キヤノングループではさまざまなESG問題への取り組みがされています。

その1つがオフィス向け複合機のリマニュファクチュアリングです。

使用済みの複合機を回収した後、分解・洗浄し、
社内基準に則って摩耗部品などを交換し、
新品同様にして出荷します。

自社の廃棄物を減らし、リユース・リサイクル活動を
積極的におこなっているのです。

キヤノンのESGの取り組み


企業活動の中でどのようにESGに取り組んでいくかについて
そのポイントを学習しました。

まずはしっかりとリサーチし、得られた情報の中から、
対応できる問題を抽出しましょう。

特に社外のESG問題に取り組む時は、
自社と社会の双方にとって価値のあることが
重要なポイントでした。

次のページでは、ESG投資について学びましょう。