Lesson7-2 SDGs実践の手引き②

優先課題を決定する

SDG Compass ステップ2

SDG Compassのステップ2では、
優先課題を絞り込んでいきます。

SDGsの目標とそのターゲットはテーマが壮大なので、
課題を見つけるのは難しいと感じるかもしれません。

そこでSDG Compassのステップ2で、
次の3つのことに取り組みましょう。

  • バリューチェーンマッピング
  • 指標の選定とデータ収集
  • 優先的に取り組むべき課題の設定

バリューチェーンマッピング

企業の事業活動は、
原料の調達から販売やアフターサービスまでの流れと、
それを支える活動があります。

バリューチェーンは、それぞれの工程で生まれる付加価値のことですが、
バリューチェーンをマッピングすることで、
自社に関連する社会、環境への影響を課題として把握することができます。

バリューチェーンマッピングを行う際、
企業の活動がSDGsの課題に与える「正の影響」と「負の影響」、
そして将来的な影響をそれぞれ考えて、
正の影響は強化し、負の影響は抑制する方針を立てます。

例えば消費者が環境に負担のかかるゴミを出さなくても済むように、
生分解性の商品を開発するなどが正の影響です。

原材料に環境への負荷がかかっているパーム油を使用しているなら、
持続可能なパーム油を使用することが負の影響の抑制になります。

引用:SDG Compassより

指標の選定とデータ収集

次に、自社のSDGsの取り組みのうち、
影響が大きいと考えられる領域について、
客観的に計測するための指標をいくつか設定し、データの収集を行います。

計測するための指標は、
SDG Compassの公式サイトの目標とともに掲載されています。

それを使っても良いですし、
それを参照して自社で独自に設定しても良いでしょう。

SDG Compass 「経営指標の一覧表」

例えば、目標12(つくる責任 つかう責任)の中のターゲット、

2030年までに、廃棄物の発生防止、
削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する

に対する指標として、SDG Compassではいくつかの指標が出てきますが、
製品を販売している会社では、

  • 販売された製品とその梱包材のうち、リサイクルされたものの割合
  • 使用された材料のうちリサイクルされた投入材料の割合

などが指標として考えられます。

指標を設定したら、その指標に関する自社のデータを集めましょう。

優先課題を決める

データがそろい、経営活動の社会への影響が把握できたら、
優先的に取り組むべき課題を決めます。

優先課題は、社会・環境・経済状況などを考慮しながら、
自社とステークホルダーにとって重要度の高いものを選びます。

また社外のESG問題を扱う時には、
自社の経営資源で継続して取り組めるかの見極めが重要です。

世の中のトレンドに振り回されずに、
優先課題を絞っていきましょう。

テーマ(取り組む課題)決定のプロセスは社員と共に

SDGsに取り組むテーマは、
ビジネスの方向性を決めるのと同じことなので、
経営陣の責任のもとで決定されるべきです。

しかし、その前段階である情報収集や課題の抽出は、
各部門の従業員とともに行い、進行状況をこまめに社内全体に発信してください。

決定事項だけが上から降りてきて「これに取り組んでください」と言われても、
「新しい仕事を押し付けられた」と感じるだけです。

テーマ決定に至る前までは社員と共に意見交換し、
業務の中でどのように取り組めるかを一緒に考え、
SDGs実践のイメージを共有しておきましょう。

アイデアを出せる環境作り

テーマを検討するメンバーは、
従来の常識や固定概念を外して選びましょう。

課題を抽出する時に、社内外のどこに課題があるのか、
問題の見え方は人それぞれ異なるものです。

それを解決するアイデアもしかり、です。

リーダーにはリーダにしか見えない、
女性/男性には女性/男性にしか見えない、
新入社員には新入社員にしか見えない、
パートにはパートにしか見えない、
問題/アイデアがあるかもしれません。

テーマ検討時、メンバーの性別や属性に偏りがあると、
アイデアの幅が広がりません。

重要な課題、良いアイデアをたくさん出すには、
多様性が重要であることを覚えておきましょう。

また、アイデアを言いやすくする環境づくりも大切です。

アイデアを言ったところですぐに却下されたり、
頭ごなしに否定されては、萎縮して言い出しにくくなります。

もちろん全てのアイデアを採用するのは無理ですが、
多くのアイデアの中からしっかり検討して絞り込みをすることが、
SDGs経営戦略の鍵となるでしょう。