Lesson10-1 SDGs経営の事例①

Lesson10では、企業で実際に実践されている
SDGsの取り組みをピックアップしました。

企業の取り組みを参考に、
SDGs実践のヒントを得ましょう。

TYPICA Holdings株式会社

「TYPICA」は、コーヒー生豆をダイレクトトレードできる
プラットフォームを展開している会社です。

「TYPICA」が言うダイレクトトレードは、
生産者とロースター(※)がコミュニケーションを取り、
両者が納得した価格で行われる取引のことです。

日本、オランダ、韓国、台湾を拠点に、
数10ヵ国でサービスを展開しています。

※ロースター:
コーヒー生豆を仕入れて焙煎し、卸売・小売する業者のこと

コーヒービジネスの問題点

コーヒーは先物市場で定量的に価格が決められています。

需給バランスの変動や、投棄による価格変動により、
生産者にとってはどれだけ良い生豆を生産しても、
儲からないビジネスになってしまっています。

さらに生産者から消費者に届くまでに中間業者が多く、
消費者が支払う金額の1%程度しか生産者の収入にならないのです。

儲からないビジネスを手放す生産者が各地で相次ぎ、
離農が増えてしまっているのが現状です。

またコーヒーの生豆の取引はコンテナ単位で、
最小ロットは18トン(麻袋300袋分)が基本です。

最小ロット以上は生産できない生産者やロースターは、
ダイレクトトレードが難しくなります。

そのため、ダイレクトトレードができるのは、
大規模な農家とロースターに限られます。

TYPICAの試み

TYPICAのダイレクトトレードでは、
麻袋1つ分(60Kg)からの取引を可能にし、
小規模生産者と小規模ロースターなど、
規模を問わずに取引ができるようになりました。

生産者は自社で価格を設定することができ、
ロースターは購入前に価格を確認します。

価格の透明性が確保され、取引がフェアなので、
コーヒー農家の収入の向上と同時に、
離農を防ぐことにもつながります。

また資金力がそれほどない小規模ロースターは、
これまでコーヒー生豆を少量で買い付けることが大変でしたが、
TYPICAを使うことで品質の高いものや個性的なものも、
麻袋1つ分から仕入れができるようになりました。

⇨TYPICAのSDGs貢献

  • 持続可能な生産
  • 生産者の貧困の解決
  • 小規模農園でも経営できることにより、
    大規模プランテーションによる環境破壊を防ぐ

株式会社やまやま

「やまやま」は、子どもに優しいおやつ「無添加こどもグミぃ。」や、
日本一お子さま連れを歓迎するキャンプ場・観光農園である
「くつろぎたいのも山々」を運営している会社です。

食品ロス×子育て世帯の悩み×障がい者福祉

世界の食品ロスは年間13億トン。

日本では、2021年、523万トンの食品ロスがありました。

そのうち生鮮食品である果物や野菜には「規格」があり、
規格に沿わない、色や形が悪いものは規格外として、
出荷されずに廃棄されてしまいます。

株式会社やまやまでは、
これまで廃棄されていた規格外の有機フルーツを農家から仕入れ、
「無添加こどもグミぃ。」を生産しています。

子育て世代は子どもにおやつを与える機会が多いですが、
市場に出回っているものは添加物がたくさん入った、
体に良くないお菓子が多いです。

お菓子を欲しがる子どもと、
体に良くないものを食べさせたくない親。

株式会社やまやまはそんな親子たちに寄り添い、
材料に有機フルーツのみを使ったグミをつくりました。

またやまやまでは、グミの加工を障がい者福祉施設に委託し、
障がい者の人が収入を得られるようにしています。

⇨やまやまのSDGs貢献

  • 規格外フルーツをアップサイクル(※)し、廃棄量を削減
  • 障がい者に仕事を提供
  • 子どもの健康に貢献

※アップサイクル:廃棄物や不要なものに価値を見い出し、
手を加えて価値の高いものに生まれ変わらせること。


2つの会社のSDGs取り組みについて学習しました。

2社とも社会課題から自社でできることを見つけ出し、
目標達成への貢献とともに、
自社に利益も生み出していました。

やまやまの代表は、3人のお子さんがいるお母さんです。

地元のフルーツが大量に廃棄される現場を見て驚いたこと、
お子さんがグミが大好きだったことがつながったようです。

次のレッスンも、企業のSDGs取り組み例を見ていきましょう。